連載 保健指導を科学する・4
事例—私の目で見た在宅結核患者療養の特例
横山 キク
1
1熊本県本渡保健所
pp.75-76
発行日 1966年5月10日
Published Date 1966/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203654
- 有料閲覧
- 文献概要
私の所属するK県H保健所の結核登録現在数は2,900名,人口は150,087,その比は人口千対19,32である.死亡,治ゆ,転出など年間削除数も800〜900名あるのにもかかわらず,年末集計は38年末も39年末もほぼ同じような数字が計上されている.月2回定例的に実施している結核審査協議会において,審議される毎回の結核予防公費負担申請数は130〜150の多きに達し,とり扱いにあたってまさに溜息である.「結核が多い.なんとかしなければ」と神経をくばるのは,職責において保健所や福祉事務所であって,当の患者も家族も,治療にあたる医師すらも予防についてはしごくのんびりとした感じなのである.人によってその認識の程度の差はまちまちであり,いちがいにいえない要素がいくつかあるとは思う.たとえば患者はもとよりであるが,関係ある周囲の人の経済,習慣,知性などがそれぞれ自己意識の上にたって,大きく作用し行動されるからであろう.保健婦が訪問して,排菌患者家族から新患者発生の予防手段にはそうとう苦心を要するものである.
このような中で,指導の数々にあたってはなはだおぼつかない感じにいつも悩まされる.その1例としてつぎの事実をあげることができる.
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.