特集 身の回わりの衛生
イントロダクション
環境概念の再認識
田中 恒男
1
1東大・保健学科
pp.10-14
発行日 1966年2月10日
Published Date 1966/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203554
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環境を考える場合の三つの条件
健康,という実体は,わかったようでわからないものである.世界保健機構(WHO)の定義が一番よく用いられているようだが,あの説明にしても,理念はわかるが実体がどうにもつかめないというのが正直な答えであろう.しかし,その実体をどのように想定したとしても,健康をきづくためには,人体側の条件と,人体をとりまく周辺条件とのからみ合いで考えねばならぬだろうことは,今さら異議をとなえる人がいようとも思われない.たとえば,いい古された概念ではあるが,米国のクラーク,レベル両教授の編さんした「予防医学教科書」にのせられた疾病成立の模型図をみてみよう.この図は,同時に健康成立の模型図としても利用できるので,わたしも説明に数回ならず用いている.
この図は,疾病とは環境という台座の上にのる人体と,病原体を両極とした秤のようなものだと教えている.ふうつの秤と違うところは,台座が固定していないでふらふら動くことで,それ以外は竿の両端にのるおもりを,いっぽうを人体側条件,いっぽうを病原体側条件になぞらえているだけである.
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