連載 保健指導を科学する・1【新連載】
保健指導方法論を中心に—このケースの場合
田中 恒男
1
1東大・保健学科
pp.79-80
発行日 1966年1月10日
Published Date 1966/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203553
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なにごとにせよ,個人のプライベートな生活面についてたち入った指導をしようとすると,多くの困難につきあたるのがふつうである.それは意識的に表面化しようとはしない心理的な問題と,社会的資源が活用・展開しにくい点,さらには問題をもつ人たちの集団化がむずかしいといったことなどに集約されるだろう.したがって,指導の本質はつねに個別性が要求され,指導面にもそうとうの技術が必要となる.
このケースでは,そういった表面的な困難を一応のり切って,主婦たちにかなり自由なものの見方のできるような態勢をつくりあげてこられたようにみうけられる.この努力はたいしたものである.とくに封建的なものの考え方のつよい農村で,性の問題を,単なる知識教育でなしに自由に相談に来させるまでに態勢化した努力は,おおいに買われるべきだろう.多くの例では,こうした試みが衛生教育の段階に止まってしまうことが多く,その中から必要な人たちをしぼって指導を与えているようである.しかし,しばしば指導が必要な肝心の主婦層がでにくかったりして,とおりいっぺんのものに終わってしまうことが多い.そのかぎりでは,このケースは数少ない成功例の一つであろう.(もっとも,訪問を中心に展開して成功している例や,母子健康センターなどの利用による成功例はかなりある.)
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