Medical Hi-lite
公衆衛生上からも見直すべき「トキソプラズマ症」
T. M.
pp.58-59
発行日 1965年9月10日
Published Date 1965/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203465
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トキソプラズマ症(以下T症と略す)は,近年になってようやくその重要性が認められてきた原虫性疾患である.それは本症の病原体Toxoplasma gondii(以下T虫と略す)が,ほとんどすべての獣類・鳥類に見出され,世界的にも熱帯から寒帯地方にまで広く分布して,最も典型的な人獣共通伝染病のもととなるばかりでなく,時として人に重大な打撃を与えることが明らかになってきたからである.
T症の最大の特徴は,感染しても大多数が不顕性感染に終わることである.これを氷山に例えれば,不顕性感染者を水面下の大きな部分にみたて,水面上の部分を急性の感染致死例を頂点とした軽重さまざまな発症者(顕性感染者)とすることができる.しかし水面上に現われた発症者群についてすら診断が困難で,また診断の対象としてとり上げられる機会の少ない疾患のため,十分に疾病像が判明していないのも事実である.また水面下の不顕性感染者群も諸検査法を開発しながらその実態の究明に努力が重ねられている現状である.しかしながらT症の重大性がしだいに認識されて,公衆衛生的対策を早急に整えようとする動きが出てきたことはよろこぶべきことである.
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