インドネシアからの手紙
恵まれた自然だが
森 みね子
1
1鹿島建設インドネシアカリプランタス出張所
pp.36-37
発行日 1968年5月1日
Published Date 1968/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203561
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今までの経過が性急すぎたせいもあろうが,渡航に備える予備知識が全くなかったといえよう.なかんずくこれから赴く土地についての地理的な知識について確かなことは,日本より暑いだろうと考えられる程度のものであった.今もって現在自分の生活している地域を明確に言葉にあらわすにはお粗末な知識しか身についていないが,この原稿をしたためるにあたり,絶好の機会を与えられたつもりで,あちこちの資料を漁って自分の頭のなかに明確にさせるためと,異郷への皆様の関心のご参考の一片にでもなれば,とペンを執っております.雨期半ばのジャワ島では平均80%前後の湿気と28度前後の気温のなかでお正月も,クリスマスも浸み出る汗を拭いながら済ませました.こんな一コマが今までの経験とすっかり異なった日本との距離を覚えさせるだけで,よほど時間の余裕のない限り,1一カ月余もかかって船旅なぞしないから,東京を飛び出してわずか一昼夜にして赤道を越え熱帯に入りこんでしまう.たいていジャカルタには夜中に到着するので,ことさらに周りの変化が目だたないので,ホテルで翌朝外を眺めた時の気持はまさに映画でもみているようなものである.赤道を越えるという事実はひどく遠くにきたものだという観念をおこさせる.
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