ルポルタージュ
農薬禍とたたかう人びと
水野 肇
pp.42-47
発行日 1965年7月10日
Published Date 1965/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203432
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進む農薬使用のかげに
「日本では多数の死亡者がでないと,どんなことも社会的問題にならない」といわれる.アンプル入りのカゼ薬は,学界や一部のマスコミでは3年前に,すでに警告がだされていた.交通事故対策も,もうどうにもならなくなって,はじめて政府も腰をあげた.東京都の水不足に至っては,もはや論外の沙汰である.
こういったものにまじって,もっとも危険性の高いものに「農薬禍」がある.いまの日本では「毎年豊作」といわれ,その理由の一つに,農薬の功績をあげねばならない.農林省の調べでは,昭和24年ごろから本格的に使用され,現在では生産金額394億円,有効成分238種類にのぼっている.昭和38年の生産額は粉剤,乳液剤,水和剤を合わせてざっと30万トン.アメリカでは日本の10倍の量が使われているが,耕地は日本の50倍なので,単位面積当たりでは,日本はアメリカの5倍.世界一の農薬使用国である.
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