特集 結核保健指導の再検討
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肺結核病変の種々相
岩井 和郎
1
1結核予防会結核研究所・病理研究科
pp.2-7
発行日 1965年7月10日
Published Date 1965/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203422
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肺結核は結核菌のひきおこす疾患であるが,結核菌を吸い込んだからといって,すぐに発病するものではない。その大多数の場合は,体の抵抗力によって自然と治ってしまうものである。しかしたまたまその治り方が不完全であると,後になんらかの誘因とともにふたたび活動を始め,X線写真で陰影としてみられるようになる。その意味では結核の発病の危険は大多数の人が持っているといえ,それゆえに定期検診を皆に受けてもらう必要があるのである。
結核性病変は肺炎様の変化をもって始まる。肺組織にはびまん性に細胞浸潤がみられ,時とともに組織は壊死におちいって乾酪化を示すに至る。乾酪化した組織はやがて軟化融解して.気管支を介して排除され.そこに空洞ができ上がる。あるいは浸潤乾酪化巣はいったん線維性の被膜でつつまれて,いわゆる被包乾酪巣となるが,やがてその一部からくずれ始めて乾酪物質が排除され,空洞ができ上がってゆく。いずれにせよでき上がった空洞は結核菌にとってこの上ない繁殖の場であり,適当な湿度と温度,壊死組織という十分な栄養とを与えられ,嫌いな日光もさすことなく,結核菌はここで無限に増殖しようとする。そしてさらに新らしい天地を求めて,喀疾とともに空洞を後にした菌は,その途中で別の気管支をへて健康な肺組織に吸い込まれ,あるいはいったん口から外に出た後別の人間の肺に吸い込まれて,そこに新らしい拠点を作ろうとする。
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