特集 医療と公衆衛生
国民の健康の現状と医療制度
国民の意識的努力こそ健康を守る源
芦沢 正見
1
1東京大学公衆衛生学
pp.18-20
発行日 1965年3月10日
Published Date 1965/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203324
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健康は自己実現の基本的条件
まず,健康という問題を真正面にすえてみますと,中心像はたしかに「健康とは主観的にも客観的にも心身に異常がない状態である」と理解できますが,そのような状態を保障するためには個人の住んでいる社会すなわち地域社会である市町村も,所属団体である会社,工場も,さらに大きくこれらをつつみ,政治上行政的な統一体として歴史的に経済的に政治的にこれらを規制している国家も,そのいずれもが健康的でなければならないはずです.人間はどうしてもこのような社会の存在からはなれられない存在であるというより,むしろ人関は集まって部落をつくり,共同して物を生産し,積極的に文化をつくり上げてゆく存在であると言ったほうがよいかもしれません.
したがって国民の健康を守るためには,いま述べたような,いろんなレベルでの健康の保持増進の保障が考えられなければならず,かつそれらのレベルでのそれぞれの健康状態に不つりあいがなく,互いに調和がとれていることが必要でしょう.さきに「健康とは一応心身に異常のない状態」というわかりきったことを書きましたが,それはそのとおりなのですが,人間存在の本質に立ち入って考えてみますと,けっきょくWHOの健康の定義にもありますsocial-well-beingということに本義があるのではないかと思います.
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