保健婦活動とその周辺
保健婦活動と地区保健診断
水野 宏
1
1名古屋大学・公衆衛生
pp.39-43
発行日 1964年6月10日
Published Date 1964/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203131
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公衆衛生活動と地区保健診断
保健婦の活動にかぎらず,すべて公衆衛生活動には目的があるはずです.その目的とはいうまでもなく,対象とする特定の社会(それがコミュニティにしろ,アソシエーションにしろ)全体の健康をたかめるということでしょう.どこにも欠陥がないという人間が存在しないと同じに,病理現象のぜんぜんないという社会は実在いたしません.しかもその病理的変化の類型と存在部位,強さのちがいが,一つ一つの社会において異なることは,個人における病理的変化の場合と同じです.したがって社会にあらわれる症状も一つ一つの社会によってちがうはずです.どの社会もそれぞれ複雑な病理的変化をになった患者と考えてよいでしょう.そして公衆衛生活動は,このような患者を治療するためのはたらきといってもよいのです.
ところで,個人の患者を治療するのに,患者の訴えもきかず,症状もたしかめず,診察も検査もしないで,いきなり処方を出すような医者があったとすれば,人はその非常識と無暴におどろき,あきれるにちがいありません.ところが公衆衛生活動の場合には,これとまったく同じことが公然と行なわれており,これをふしぎに感じる人もいないようです.世にこれほどふしぎなことがあるでしょうか.
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