学生ノート
無医地区に保健婦を
千葉 三和子
1
1宮城県立公衆衛生看護学校
pp.55
発行日 1964年7月10日
Published Date 1964/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203163
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一昨年の夏期休暇のクラブ活動,日赤奉仕団クラブで,南会津の無医地区を4泊5日の予定で日赤県支部の協力のもとに巡回診療を行なった.朝早く学校を出発し目的地に着いたのは夕方,3時間ぐらいは走れど走れど(マイクロバス)すれ違う車一つなかったことには驚いた.だいぶ事前のPRがきいたためか,たいてい野良着のまま種々の訴えをもって集まって来た.目的どおりの嬉しい叫びをあげながら楽しい奉仕活動だった.
ある母親などは子どもの足にできた化膿創に大きな何かの草の葉を押し当て,その創部はまっかにはれあがり見るも痛々しかった,ある老人は両足の浮腫がひどく歩行さえ自由にならず,臨床実習では見られない,どんなしろうとでも一見して浮腫とわかるようなひどいものだった.この老人の言うには昨年の夏,このような巡回診療のとき,胃が痛くて同じように見てもらったのだと,そのとき胃薬を少し飲んだとか,いっしょに行った先生は遠い町の医師に1度早くみてもらうように勧めていた.遠い昔を思わせる大和ことばも聞かれたが,診療の介助をしていて,もし来年もう1度来ることがあったら,果たしてこの老人は診察に来てくれるだろうか.自然目頭が熱くなるのを覚えた.このような地区にこそ,このような人びとにこそ気軽るに衛生相談に乗ってやれるそういう人を,と思うと数カ月後の卒業を待ち遠しくさえ思われた.
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