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保健福祉の諸問題—国民生活白書、厚生白書に思う
村山 午朔
1
1神奈川県公衆衛生協会
pp.63-66
発行日 1963年10月10日
Published Date 1963/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202956
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□はじめに
今日はいろいろな問題について愚見を申し述べてみたいと思う.まず結論から申し上げると,「もっと考える人になりたいということである.私なども,もっといろいろな本を読み,そしてもっとよく考えてみたいと思いながら,つい多忙に追われてその日暮らしになりがちなのを恥ずかしく思っている.もっと「考える保健婦さん考える保健所」になってもらいたい.
最近「人つくり」ということがいろいろといわれているが,科学,技術の進歩を背景とした産業,経済社会の急激な進展にともなって,いわゆる「人間疎外」「非人格化」が強まるとき,この問題は本気で考えるべきことであると思う.「少なくも,人格主義の火は,消し去られることのないように守るべきではないかと思う.むろん「新たな産業革命」の時代に,人間はどのように生きるべきなのか.どこに価値をおいて生きるべきなのかの問題は,日本だけのことではなく,まさに世界的な課題であろう.哲学はその貧困を嘆いている場合でもあるまいし,その論議が日本でももっと高まってよい.われわれはそれを期待する.ただそこからどんな新しい価値観人間観が現われてくるにせよ,少なくもそれが現われて時代と社会に定着するまでは,なおこの人格主義の火を物質的繁栄万能主義の強風の前に守っていきたいと思うのである.
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