社会の窓
厚生白書
阿部 幸男
1
1読売新聞社
pp.38-39
発行日 1958年3月10日
Published Date 1958/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201596
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先月半ばに厚生白書が発表された.前年度に引き続き,二度目の白書である.白書の先輩は経済白書でこの方はすでに四度目を数えているが,これら白書の狙いというのはどこにあるだろうか.「予算分捕りの下心があると邪推したくなる」という者もあれば「自已礼賛と自己満足に終り,特に現状に即した.将来の計画に独善性が強く出はしないか」と心配する向きもある.これらの心配にも拘らず,軽済にしろ厚生行政にしろ白書の発表は,その実態をつかむ貴重な手がりになるし,国民もこれを歓迎するわけである.
ところで,厚生白書とは,いつてみればその年の厚生行政の報告書だが,単に数字や統計だけを並べるだけでなく,いま問題になつていることに焦点を合わせている.前年度が人口問題から戦後の厚生行政の動きを分析しているのに対し,こんどの白書は「貧乏追放」に焦点を合わせ,貧困政策の現在の段階を分析して,この一年間の厚生行政の動きを説明しているのだが,それをみるといかに日本が貧乏であるかがよくわかるので,一名貧乏白書という異名をとつた次第.さて,白書の全文は350ページを越えるぼう大なものだが,その主な点をごく簡単にまとめてみると次のようなものである.
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