コンタクトレンズ(44)
「看護の灯高くかかげて」をめぐって
長谷川 泉
pp.18
発行日 1963年9月10日
Published Date 1963/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202913
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金子光氏の「看護の灯高くかかげて」が出た.「看護学雑誌」や「保健婦雑誌」の巻頭の扉をかざってきた文章を取捨選択して編集したものである.しかし,これらの短文の集積は決して過去の文章ではない.現在の看護界に鋭い問題意識を投げかけて現在の時点に生きている.
これらの短文の群れによって象徴された時代は,看護界のまさに動乱の時代であった.冒頭には進駐軍のオルト課長が戦後厚生省にはじめてやってきた時の回顧が述べられている,その時,その時点から,日本の看護界の新しい生まれかわりが始められたのである.迂余曲折,それからすでに15年余をけみした.日本の看護界はめざましい躍進をとげた.つきそいに毛のはえたような戦後のみじめな看護の実態から抜け出して世界の動きと歩調を共にするところまでのしあがってきた.著者は身をもって,そのような混乱からの立ち直りと新しいコースを見さだめる看護界と歩みを共にしてきた.だから本書には,戦後の看護界の哀歓が,そのまま切なく息づいている.本書が,余人をもっては書きえなかったゆえんである.
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