びぶりおていく
医療の内幕/看護の灯高くかかげて/パパ―もどってきてよ/新しい恐怖
長谷川 泉
,
髙橋 百合子
,
I
,
N
pp.52-53
発行日 1965年12月10日
Published Date 1965/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203525
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日本の医療の現状を分析
社会保険宮崎江南病院長の三原七郎博士は「三等院長のメモ」や「外遊の生態」の前著で文名をあげた.ソフト・タッチの柔軟な筆致で急所に入りこんでゆく手ぎわはまことに見事である.その外貌のごとく,鋭利さはすこしも露呈されていないようで,実は鋭い分析が要所要所をくまなく刺し貫いてゆく.三原院長にやられても,相手がすなおに参ったと思うのは,人がらのさせるわざであろうか.前著「三等院長のメモ」では,日本の医療の泥沼をついて,そこはかとないユーモアをたたえながらも,新しい創造の目をつちかっていた.そのゆえに,この本は広く全国にむかえられたのである.
今度の「医療の内幕」は「三等院長のメモ」の続編である.例によって全人格が片言隻句にまでしみわたって,一文字も地に足のついていない文字はない.体験と見識からにじみ出た文字であって,全編筆者の持ち味そのままである.日本の医師は100点満点で77点外国では93点から95点,ちかごろは「お医者さんに診てもらう」ではなくて「医者を呼ぶ」「医者に見せる」になったと筆者は嘆く.いや嘆くという大げさな身ぶりよりは淋しげな口ぶりでそれを認め,その現実から出発して日本の医療の現状を分析してゆく.医師の社会評価が低下し,日本の医療の実態がおかしな歪みを持っているのは,その根が深い.
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