講座 ナースと健康
看護婦の健康と労働条件
谷野 せつ
1
1労働省婦人労働課
pp.17-21
発行日 1955年6月15日
Published Date 1955/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909846
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労働基準法の制定によつて,働く婦人の保護の問題は,一応確保されたかのようにみえる。労働時間の制限,定刻以後の休養,男女同一賃金等々。之等の規定は,母性保護の立場にたつて,働く婦人の健康をまもりその地位をたかめる上からは,まことに意義の深いものであつた。
しかし労働の問題は,いつの時代に於てもその根本に於ては,能率の高度化という本質的な問題を持っている。これは経済界が好況であると不況であるとをとわず,たえず労働の生産性をたかめることが,本質的には求められているのである。であるから労働の問題といつても,これを使う側からすれば,労働保護とか,適正な労働条件については,とかく見すごされてしまうきらいが無いわけではない。とりわけ最近のデフレ経済の下に於て企業の合理化がすゝめられているような場合には,労働の生産性の問題を婦人に適用した場合,婦人に本質的な母性保護の意味合いをさえ,忘れさせてしまう傾向にもなりかねないのである。このことは一般的には婦人の職場への就業をはゞむ傾向を助長したり,結婚婦人をきらつたり,婦人にのみより低い停年制を強いるようなことにもなる。
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