編集者から読者へ
育児パパといくじなし父親
栗原 弘
pp.10
発行日 1962年10月10日
Published Date 1962/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202661
- 有料閲覧
- 文献概要
おくればせながら評判になつた「パパの育児手帖」(高瀬広居・弘文堂刊)を読んだ.幼児の再発見—という傍題のつくこの新書版300頁は,いま婦人雑誌などではやりの育児パパ(これは大なり小なり育児について母親まかせではいけないと自覚した父親を総称している)には,まことに興を覚えさせ,一気に読ませる内容をもつている.
かざり気なく1人の父親として長女に対して行く,あるいは妻と子どもの家庭の芯となつて転回して行く生活を,ありのままにえがいている姿の中には,著者も前書で述べているような独断的な育児法として,世の識者にはヒンシユクをかうところもあると思われるが,懸命に良き父親としての権利と地位のため奮斗する著者の迫力の前には粉砕されてしまうものだろう.また団地族の生態も子どもの背景として浮かびあがり,悲喜とりまぜた巧まざる文明時評にもなつていて,思わず吹出してしまうユーモアにも満ちている.
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.