連載 ハローベイビー—神戸市立王子動物園子育てストーリー・9
育児はパパの仕事
谷岡 正之
pp.734
発行日 1998年9月25日
Published Date 1998/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902001
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この鳥はヒクイドリと呼ばれ,「火喰鳥」と書く.火をえさにしているわけではないが,その名の由来は謎だ.ニューギニアの森林にすみ,翼はあっても飛ぶことができないが,丈夫な足と爪を持ち密林の中を駆けめぐる.人の背丈ほどの大きさで,体が真っ黒,首が青,赤い肉垂れ,頭には硬い兜,そのうえ警戒心が強く,しかも気が荒くてけんか好き,人も襲うという不気味な鳥である.
さて,子育てのお話.この写真を見るかぎりごく普通のなごやかな親子の光景だが,実はこの親は父親である.元来,この鳥は単独で生活し,恋の季節だけ雄雌が寄り添う.やがて雌は4〜5個の卵を産んで「お父さん,あとはお願いね」と巣を去ってしまう.残された父親は50日も卵を温め,ひながかえった後もひたすら育児に励み,およそ1年間,世話をしながら巣立たせるのだ.数多い動物の中で,父親が育児に携わることは時折見かけるが,育児に専念することは珍しい.
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