病態生理講座
婦人科領域における出血の病態生理
佐藤 肇
1
1東大医学部産婦人科学教室
pp.139-143
発行日 1961年11月10日
Published Date 1961/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202463
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I.はじめに
"出血"というのは,ある病気に罹つた結果として現われる一つの症状にすぎない.しかしこの"出血"を中心にして婦人科疾患を眺めることは特に意義があると思われる.というのは我々が日常接している婦人科の患者でこの"出血"を訴える者が大変多い,言いかえると婦人科疾患の多くのものはこの症状を伴つているからである.そこで"出血"が何故起るのか,そこにどんなカラクリが働いているのか,そしてどんな病気がこの出血と関係があるのかという問題が当然起つてくるわけで,このような問題点について考えるのがこの項の目的である.予めお断りしておきたいのは,この項では専ら婦人科領域での出血に限つて述べることとし,妊娠に関係のある,つまり産科的出血は(子宮外妊娠,悪性絨毛上皮腫を含めて)すべて除くことにした.産科的な出血にも重要なものがいくつかあるが,これらについてはまた別の機会に譲りたいと思う.
"出血"が特に大事な症状であることは今述べた通りであるが,一方では健康な婦人においても"出血"は月経という形で現われる一つの生理的状態でもあるので,婦人の出血を理解するためには先ず手始めにこの月経と呼ばれる出血の仕掛けをよく知つておく必要がある.したがつてこの項では,はじめに正常月経の出血機序について述べ,次に病的な出血の病態生理に関して考えてみることにしたい.
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