Japanese
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薬剤
産婦人科領域におけるTanderilの臨床治験
Clinical experience with "Tanderil" in obstetrics
小林 拓郎
1
,
佐藤 肇
1
,
手塚 一郎
1
Takuro Kobayasni
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.661-668
発行日 1965年8月10日
Published Date 1965/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203322
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はじめに
産婦人科日常の外来診療特に再来診療において慢性附属器炎,子宮旁結合組織炎等の小骨盤内慢性炎症群は子宮腟部糜爛トリコモナス腟炎頸管炎などと共に種々の面で治療しにくい疾患の中の一つであると思われる。
急性期のものは抗生物質の投与により一応治癒したかにみえるがその大部分はいわゆる慢性に移行して自他覚共釈然とせず年余にわたり通院するものもまれではない。思うにこれは炎症の治癒機転において局所に過剰の高分子蛋白物質の析出を招来して組織の瘢痕化を生じることが大きな原因の一つと考えられる。このため子宮および附属器周囲に内診所見として抵抗圧痛があり非観血的には種々の治療をつくしても容易に改善せず,患者も長期間に亘つて下腹部異和感牽引感疼痛等を訴え中には不妊症を発して永らく慢然と通院するに至りしかもその治療効果も思わしくないことが屡々見受けられる。したがつてこのような小骨盤内炎症の治癒機転を積極的に好転せしめてその予後を改善するような治療法ないし薬剤の出現が切に望まれるしだいである。従来副腎皮質ホルモンがその抗炎症作用の故に用いられて来ているが副作用の重大性に鑑みて軽意に用いることはいましむべきこととされている。したがつて治療上のこのようなジレンマに対して新薬剤の出現がさらに期待されるわけである。
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