コンタクトレンズ(25)
写絵というもの
長谷川 泉
pp.72
発行日 1961年6月10日
Published Date 1961/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202354
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先日,吉祥寺の小林源次郎さん宅でうつし絵(写絵)なるものを初めて見せてもらつた.望月一憲氏のきも入りになる会である.小林さんは会社つとめの余暇をさいてもう何十年と芸能資料の研究を進めている篤志家である.日曜・祭日だけの作業や研究であるが,その累積によつて,雅楽の撮影や歌舞伎の所作の分析をはじめ鎌倉の古社寺の古宝などの系統的な撮影保存の仕事を進めている.個人の資力と労力と時間を注ぎ込んでの仕事であるから,すきでなければできることではない.ほとほと感心させられる.
写絵は一種の幻燈である.数台の幻燈器(風呂という)を使いわけながら,音楽とせりふを加えて和紙のスクリーンに映し出して芝居を見せるのである.裏から映すのであるから,演者はスクリーンの裏がわにあって,しかも種板を上下裏がえしに使うのであるから,熟練を要する.
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