読者からの手紙
声なき保健婦の声を—僻地の保健婦にあたたかい施策を
新井 京子
pp.9
発行日 1961年5月10日
Published Date 1961/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202320
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野沢は大きな雪がしんしんと降りつづいて,6mはゆうに超えます.地区民からの希望でもあり,計画立てたことなので出掛けました.2月13日は上天気でしたが,14日から猛吹雪,12も山を越えてきたことを思うと引返すのも残念です.13日補導委員会,14日虫生若妻会,15日七巻婦人会,予定どおり決行しましようと,熱心な先輩保健婦と話をきめて,腰までつかる雪を払いのけながら虫生の渡船場につきました.視界はきかず,ねむくはなる,大声あげて船頭さんをよんで,しつかりロープにつかまつて船をたぐつてもらい千曲川を渡り,くつち川までのしてもらつたところ,上境の駅に着いたがすでに汽車は不通,次の駅まで,またまた綱渡しの船で七巻に着いたらまつくらでした.村では捜索隊を出す手筈をしているところで,声をあげて喜んでくれました.
その晩はとうとう12時まで村の人と語り合いました.この巡回衛生教育は,たくさんのことを私に教え,役場や保健所や法務局(死因分類が村の死亡届では分らないので)まで行つて2カ月かかつて調べた地区調査が,実感をもつて私の頭の中に刻みこまれました.仕事の仕方は私と違うにしても,こうした奥地に組織を育て,頼まれれば決していやな顔をせず,こつこつと仕事をしてきた先輩をほんとにえらいなあと思いました.
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