講座
リーダーシツプについて
松浦 健児
1,2
1人事院
2横浜国大
pp.50-52
発行日 1961年1月10日
Published Date 1961/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202255
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I.A婦長の指導性—事例—
ある保健所のA婦長は,どちらかというと神経質で,保健所業務には非常に几帳面であつた.そのため,何か懸案事項を決めるには,部下の職員全部をよんで何回も集団討議し,そのうえで話をまとめるという方法をとつていた.しかし,その事項が重要であろうがなかろうが,いつもそういう方法をとつたため,一部の部下からは不満の声がでた.それは,一つのことに取りかかると他のことが全く無視され,仕事が渋帯するという理由に基づくものであつた.
ある日,A婦長は部下のBさんに「事務の処理方法がどうもスムーズでないようですから,これこれの方法で処理するように考えて,文書や記録に関する一連の処理手続を作つてください」といつた.そこでBさんは,その指示に従つて,いろいろと調査,研究をし,約2週間の後立派に処理手続を作つた.そこで,例のごとく集団討議にかけ,皆の希望意見を入れて,2,3の点を改正し,それを禀議書にしてA婦長に渡しておいた.Bさんは,自分の作成した手続が今後,自分達の基準になれば,苦労のかいがあつたという気持で,内心得意でもあつた.ところが,何日たつても決裁になつてこないので,例の「文書処理手続について」という件名の禀議は,どうなつているのかA婦長に問いただしてみたところ,「多少疑問の余地があるので,いま手許にあります.もう少し検討させてください」という返事だつたので,その時はおとなしく引きさがつた.
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