読者から編集者へ
いまこそ監視の眼を
吉田 久美子
1
1国保
pp.9
発行日 1960年9月10日
Published Date 1960/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202161
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長い間,いろいろと論争されていた公衆衛生についての国保と保健所のあり方について,ようやく一つの行政方針が定まつたことは,自分たちの進む目標と系路が明らかにされたということで落着きを感ずるものであります.さて,この行政方針と,これに関連する一連の方策として国民健康保険事業に関する指導方針,国保の無医地区対策の通牒をみると,私はなんとなく不安なものを覚えます.それは,国保保健施設として活動を要請されている保健婦である以上,保険者の意志が保健婦の活動を規制するものであるということと,保健婦の活動意志があくまでも公衆衛生事業にあるということからくるものであります.私がこういえば,"保険者が公衆衛生的な考えをもつように教育をすればよい"とか,"保険施設として予防活動をすることも公衆衛生事業であるから,なんにも保健婦の活動が歪められることはないでしよう"ということなどが言い返されると思います.しかし現実はそのような理屈で割り切れるものではありません.保険者は国保の財政を赤字にしないことをスローガンに掲げています.予防的活動,公衆衛生事業というようなものは,投資的な仕事だと思いますが,赤字にならないためにはこのような投資的な活動が十分にできるはずがありません.国保の事業予算をみても,保健施設費は保健婦の人件費だけで,他にはなんの予算ももたないか,わずかしかない保険がきつと全国では大部分ではないかと思います.
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