特集 保健所における監視業務
監視業務の実践—薬事監視
柳原 義彦
1
Yoshihiko YANAGIHARA
1
1大阪府富田林保健所
pp.824-829
発行日 1992年12月15日
Published Date 1992/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900697
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◆はじめに
薬事監視の基本は医薬品等の品質,有効性および安全性を確保し,その安定供給を図ることにあるが,医療との関わりを切り離して考えることはできない.
6年前,筆者が病院薬剤師として調剤の実務に従事していた頃,臨床医の先生から次のようなお話を聞いたことがあった.「海外のある病院で,医師がいつもと同じようにフェニトイン散を患者に投与したところ,突然,運動失調・眼振等の副作用が現れた.TDM(Therapeutic Drug Monitoring)など調査の結果,原因は“この製剤の賦形剤が硫酸カルシウムから乳糖に変更された”ことによるものであることが分かった.」
「すなわち,有効成分の1包中の量は一定であったが,賦形剤が乳糖に変わったことによりバイオアベイラビリティーが向上し,フェニトインの血中濃度が急激に上昇したため,副作用が現れたわけである.単品では何ら薬理作用をもたない賦形剤が生体内においては,有効成分の吸収に何らかの影響を及ぼした」という医療現場からの生の声として,深く筆者の心の中に残っている.
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