映画紹介
珍品堂主人
外輪 哲也
pp.32-33
発行日 1960年4月10日
Published Date 1960/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202061
- 有料閲覧
- 文献概要
芸術院会員になつた井伏鱒二の「珍品堂主人」の同名映画化で,脚本八住利雄,演出豊田四郎のコンビが取組む.
骨董鑑定にかけては,專門家からも一目置かれている「珍品堂主人」と呼ばれている加納(森繁久弥)は,出入りの実業家九谷(柳永二郎)の空家になつている数寄屋造りの邸宅を借りて高級料理屋を経営し,持ち前の凝り性と慧眼で,大阪に支店を持つまで成功するが,九谷の紹介で,茶人であり商業デザイナーであるという蘭々女史(淡島千景)が,女中頭を連れて乗り込んで来て,支配人の加納に命令するような横暴を見せ,あげくの果てに,従業員のストの首謀者に祀りあげられて追い出してしまう.敵の仕組んだ罠にひつかかつた腹イセに,かつて蘭々女史からつかまされた偽物の「白鳳仏」を「欲に目がくらんで,こういうものをつかまされないように」と九谷に贈るが,実は彼女も被害者.うしろで筋書を作つて2人をあやつっていたのは九谷であり,彼女もお払い箱になる…という小ダヌキ,キツネ,大ダヌキのばかしあいのような皮肉な話である.
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.