エトランゼ
林語堂先生の教え(2)
常田 正
pp.925
発行日 1987年7月1日
Published Date 1987/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204214
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ニューヨークの上等なレストランを舞台にして,林語堂先生は仮空の実験を試みた,杏(あんず)の種が混入じたスープを出されたときの客の態度にどのような人種差が表れるがという実験である.
まずアメリカ人はスープを飲み,種は残し,空腹が満たされる上機嫌になって代金を払い給仕にチップまでくれて出て行く.英国紳士は種を見つけると給仕を呼んで新しいスープ取替えさせ,スープを飲み終わると平然と退出する.ドイツ人はスープを飲み,種は残し,パンで皿をきれいに拭きとって食べ,なおかつ種が入っていたからと言って代金を値切る.オランダ人ときたらスープを平らげ,種は持って帰り庭に播くのである.イタリー人はスープを飲んでから口汚く罵り,インド人はスープを飲み終わってから種に気づいたふりをしてしつこくもう一皿要求し,ロシヤ人はスープを飲み,種も気づかずに呑みこんでしまい,皿も舐めてしまう.中国人はスープを飲み,種も賞味し,感謝の礼をして退出する.日本の紳士は種を見つけると日の丸の旗を汚されたときと同じように怒り狂い,支配人を呼びつけ皿を叩き割って謝罪を要求する,ただし,スープ代は払い,皿代を弁償して意気揚々と去って行く.
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