特集 事業所保健婦のすべて
企業と保健婦—企業体のなかで保健婦はどのような仕事を要求されているか
近江 明
1
1富士銀行衛生管理室
pp.17-24
発行日 1959年12月10日
Published Date 1959/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201985
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労働者の健康保持はやがて企業体の生産性向上に良い影響を与えるが,それはあくまで結果であり,目的ではない.だが生産性に役立たない健康管理は無視されるであろう.心にしつかり銘記すべきことは労働者の立場に立つて物を観,考え,行うことである.—これが近江氏の衛生管理の理念である.
企業に於ける衛生管理の社会的背景
我が国の産業衛生の分野で,最も大きな変革は昭和22年に制定された労働基準法の登場であります.領土の45%,人員252万を失い,主要生産設備の過半を焼失し,数百万の国民は餓死寸前に追いやられていた当時に,「すべての国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法25条の精神を背景に労働基準法がうまれたのです.当時,明日の食糧に追われ,職を求めて巷にさまよう失業者は無数をかぞえ,新憲法は絵にかいたもちであり,労働基準法は夢物語として企業経営者にも労働者にも映じたかもしれない.
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