論叢 保健婦活動の前進のために
企業と医師に対する悩みを越えて—事業所の保健婦から
富山 明子
1
1パイロット万年筆株式会社
pp.698-699
発行日 1964年12月15日
Published Date 1964/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202953
- 有料閲覧
- 文献概要
企業に対する保健婦の問題 入社した当時,従業員から君は組合側か会社側かとたずねられたことがある。云うまでもなく,事業所保健婦は組合員であると否とにかかわらず企業の人間個々の健康保持増進のため,努めなければいけないが,直接個人の人権擁護に立つ組合と,日々の利潤追求を願う経営者との相容れぬ中での保健婦の衛生管理活動の微妙さを痛感させられた。保健婦は従業員個々の立場に立ち,健康を守っていかなければいけないはずであるが,保健婦である私は企業の一員であることから会社の要求も受入れていかなくてはいけない。ということは利潤追求を最終目的とする企業においては,健康管理においても日々の業務が得になることでなければいけないという企業の一員である保健婦と,従業員の健康を守らなければいけないという公衆衛生の一員である保健婦の要求と目的の違う二面を持合せているのが事業所保健婦であるということだ。このことを知り,事業所での健康管理に当らなくてはいけないであろう。そこで私は組合側,会社側でもって運営される衛生委員会において,健康で楽しく働けるような環境や従業員のことを考える保健婦は中立の姿勢をとらなくてはいけないとの自己の保健婦の姿を表明した。このことが君は組合側か会社側かの質問のゆえんである。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.