発言席
民間企業のなかで問い続けるもの
吉井 かずみ
1
1ヘルシーラインサービス
pp.881
発行日 1988年10月10日
Published Date 1988/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207613
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シルバーサービスといってもいろいろあるが,当社はそのなかでも訪問看護やホームヘルプサービスといった,いわゆる在宅介護サービスを提供している純民間の会社である。入社当初,りっぱな門構えの家へサービスを"売り"に行ったとき,ソーシャルワーカーとして違和感と疑問を感じ,思わず門の前に立ち止まったのを覚えている。その後,何人もの老人や家族に出会うなかで,どんなに大きな庭のある家でも,高価な家具に囲まれていても,一歩在宅介護という場に踏み入れば,医療や福祉サービスを十分に活用しきれず,孤軍奮闘している点はみな同じなのだと痛感するようになった。そんななかで「家族の力」を専門家が正しく判断し,それをサポートする形で当社のサービスの他,保健婦さんやPTなど地域のなかのさまざまな専門家達が同じ目標をもってかかわれたとき,大きなパワーで老人や家族を支えることができた。
民間企業でサービスを提供することの特徴の1つに,明確な契約関係がある。利用者側が自由意志に基づき,サービスを買おうとする。売り手側であるこちらは,専門的な視点に立ち,当社でできる範囲のより効果的な援助内容を提示する。そして双方の合意のもとに金銭を媒介として,内容を契約し,実施する。そこでは,援助をする者とされる者といった(ある種の)上下関係は通用せず,私達1人1人が,料金に見合うだけの援助ができているかどうかを,常に問われることになる。
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