講座
事業所保健婦に対する偶感(上)
西川 美枝
1
1日本電信電話公社
pp.19-22
発行日 1958年3月10日
Published Date 1958/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201589
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このごろ,しんけんに事業所保健婦に関心がむけられるようになりました.このことは看護界にとりましてもいろいろ理由があると思いますが,一面企業の経営面から,保健婦の活動というものが,有効的であると認められてきたからにちがいありません.もつとも,保健婦が企業体に採用されましたのは,今から6〜70年前で,米国のある大理石工場や英国のチヨコレート製造会社が従業員の保健対策のために雇傭された記録が残っております.そしてこの措置は,広く好評を博し,多数の労務者が集合するところには次第に保健婦が配置され,驚異的に発展した産業革命にともなつて,公象衛生分野における保健婦業務を広範なものにし,保健婦は,工場内における安全衛生計画に参劃する重要な役割をしめるまでになりました.ところが,第一次大戦の終結後,経済界は不況となって.大小の工場が閉鎖あるいは縮少の不運にみまわれ,保健婦の活動も衰微の一途をたどるようになってしまいました.が--第二次世界大戦は再び各種の産業を活発にして,人的資源を有効に動員することの心要にせまられ,保健婦の活動分野は急速に広がり,識者間には,事業の合理的経営には,保健婦業務が必要欠くべからざるものであると論ぜられるまでにいたりました.
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