巻頭言
偶感
伊藤 良雄
1
1東京大学医学部第4内科学教室
pp.1019
発行日 1972年12月15日
Published Date 1972/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202439
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循環器学に限らず臨床医学一般の進歩の仕方には,いくつかの型がある。その第一はすぐれた臨床家が豊富な臨床経験の中から天才的ひらめきにより新しい疾患または症候群を確立するという態のものである。これらはその栄誉を重んじて発見者の名称がつけられている。最近では,Conn症候群がその一例であろう。この症候群の発見に刺激され内分泌性高血圧症の色々な型が次々と見出されてきている事は周知のことである。かような発見は,臨床家の独壇場である。患者が最も良きわれわれの師である事を示し,一例一例を貴重な例として取扱うべきことを示すものであろう。
第二の型は,検査法や測定法の開発に伴い飛躍的に進歩する態のものである。これには物理的方法と化学的方法がある。物理的方法の場合,理づめでコツコツ開発される方法と,あるひらめきで開発される方法とがあろう。ひらめきで開発された方法の代表は心臓カテーテル法であろう。Cournandらが,Forsmannの古い論文を読んで,これを診断に応用した炯眼には頭が下がる。右心カテーテル法は左心カテーテル法,冠静脈カテーテル法などへと発展し,機を一にして発達してきた心臓血管造影法と相携えて心臓・血管外科よりの要請に十分応えるとともに,先天性,後天性心疾患の診断や病態生理の解明に大きな貢献をなしとげたし,またなしとげつつある。
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