扉
偶感
松井 将
1
1昭和大学脳神経外科
pp.311-312
発行日 1978年4月10日
Published Date 1978/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200789
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脳神経外科領域の診断法も頭蓋レントゲン撮影に初まって,気脳写,気室写,脳血管写,脳波,さらにRIスキャナー,CTスキャナー等ととどまる所を知らない発見開発によって,飛躍的な進歩発展を遂げてきた.その発展ぶりに我々は驚嘆させられると同時に,敏速で的確な診療への多大な貢献に唯だ感謝するのみである.特にCTスキャナーの出現は脳神経外科診断にとって脳血管撮影法と共に一大革命をもたらしたものといえよう.現在では高価な機械ではあるが,それも奇跡的な高度成長を遂げた日本経済にとっては問題視される程の事でもないかの如く,全く目を見張るばかりの普及であって,誠に御同慶の至りといえよう,然し補助診断機械の提供する情報は,その機械の個性的特性を通じてのみ具象化する事のできる,1つの"像"であって,映像の存立基盤となっている生体内の病変そのものを示してはいない.機械が持つ宿命である.従って機械の提供する情報から病変診断を確定するに当っては,次の2つの条件が満足されねば正確とはいえない.機械から提供される情報は個々の機械の特性によって色づけられた情報であるから,これを使用者が補正する,即ち機械の機構特性への豊富な知識の習得によって初めて補正が可能となるものである.他の1つは複雑多様な病変の如何なる状態が検査時点において機械を通して映像化されたかを判断する,即ち解剖,病理など各分野の過去現在の幾多の研究集積への充分な知識の裏付けによってのみ正確な判断決定がなされ得るものである.
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