巻頭言
偶感
野原 義次
1
1東京医科大学内科
pp.95
発行日 1977年2月15日
Published Date 1977/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203005
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子供が玩具屋の店先で目移りがして,きょろきょろしているのをよく見受ける。それと同じような姿が最近の自分の姿であるように思える。心臓という臓器の疾患に明け暮れて来た1人の心臓屋には,高血圧症という全身的の機能疾患は何かしら別の感じを受ける。臓器疾患と異り,機能疾患は形がなく,漠として本体を掴むのに当惑を感ずる。公園の噴水の美しい姿に似通っているとも思う。噴水が止まれば一瞬にして水の花傘は姿を消す。それに似た不安定さを感じる。それが機能疾患の本質であるのであろうか。高血圧症もレニン・アルドステロン等のレベルの問題になると,具体性のためか,安定の感がまして来る。その反面,その要因の多様性にまた新たな当惑が生れて来る。
慢性うっ血性心不全も高血圧症と同様機能疾患であり,生体の調節機序に関する疾患である。しかし,これは高血圧に比して,より一層具体性を帯びる。心不全をきたす要因がより一層臓器的であるからであろうか。
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