保健婦鞄とともに
共通の悩み
岩間 秋江
pp.64-65
発行日 1956年9月10日
Published Date 1956/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201271
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私は此の度無医地区の保健婦として,保健タイムスが取り上げ世間から御批判を受けた保健婦です.特に医療行為が是か否かといろいろの立場の人々や,同業者の方達から多くの御意見をのべていただきどの様な批判も大きな目を開き耳をかたむけると覚悟していたのですが,その反響があまりに大きく一時はノイローゼになりなにも考えずなにも書く気にならず,静かな山の中で読書にふけり世間からの注目を全身にあびながら,自分の冷静を取りもどす事のみに努めて来たのですが,保健婦雑誌6月号の「ある保健婦の足跡」と「療友として結ばれて」の二つを読んで私はなにか書きたい訴えたいと強く共通の悩みに感動されました,農村に働く保健婦は多かれ少なかれこの二人の苦しみと相通じる悩みはきつと持つているのではないかと思います.その一人一人の苦しみ,悩みをどこかに訴えどこかに吐き出し強い支えによつて支えられ,はげまされ,なぐさめられ話し合つて解決の糸口をつかむ事が出来たならば,秋葉さんの書かれた人もなんとかなつたものではないか,金胎さんももつと早く苦しみから脱し得られたのではないかと思うのです.
私もこの村へ来て4年間法を乗り越えて今思い出しても冷汗をかく数々の思い出を持ちながらなんとかして避地に医療施設を,肉村の保健婦の身分保証を,そして医療行為をしなくてすむ,農村保健婦になりたいと毎日毎日不安とよろこびと苦しみに悩みながら仕事を続けて来たのです.
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