連載 病原微生物・見方をかえたら・8
人畜共通感染症
益田 昭吾
1
1東京慈恵会医科大学
pp.945
発行日 1996年11月25日
Published Date 1996/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901491
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通常,医学において感染症や伝染病を考える場合,ヒトが宿主であることはいうまでもありませんが,疾患によってはヒト以外の宿主を考えなければならないこともあります.特に問題となるのは,ヒトにとって非常に致命率が高い感染症や伝染病のあるものは,ヒト以外の動物が本来の宿主であるからです.このような病気はヒトもほかの動物も病気になるという意味で,人畜共道感染症とよばれます.この中にはペストのようにヒトの間でも伝染病の形をとるものもありますが,その多くはヒトからヒトへと感染環を作ることはありません.
人畜共通感染症が問題となるのは,時として見られる異常なまでの致命率の高さです.なぜそのような場合,ヒトにおける致命率が高いのでしょう.これらの病気を起こす病原体も,本来の宿主に対してはヒトよりもはるかに低い致死性をもっています.例えば狂犬病というのはヒトにおいては非常に致命率が高い感染症の1つです.しかし,本来の宿主であるイヌ科の動物では,かみついて狂犬病ウイルスを次の仲間の宿主に伝えて感染環を成立させるまでは生存しているはずです.そのような場合には,ヒトにおけるより致命率ははるかに低いと考えられます.
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