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世界の波
末松 満
pp.45-46
発行日 1956年7月10日
Published Date 1956/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201233
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デイエンビエンフーの天使—といえば思い出される方も多かろう.一昨年の初夏インドシナ戦争が8年にわたる流血の大詰めとしてデイエンビエンフー攻略戦を演じたとき,包囲されているフランス軍の頭上へ空から舞い下り,身を挺して傷病兵の看護に当つたガラール嬢のことである.その後まもなくヂイエンビエンフーは共産軍によつて占領され,紅一点のガラール嬢は全世界から安否を気づかわれたものだが,やがて無事に救出され,故国へ帰つて政府から名誉勲章を授けられ,二十世紀のナイチンゲールとうたわれた.
デイエンビエンフー陥落を機としてジユネーブに休戦会談が開かれ,7月21日を以つて戦火は鎮まつたが,この戦火の中に芽生えたガラール嬢の恋は,ちようど2年後に実を結び,近く結婚するそうだ.相手はガラール嬢らを戦場へ運んだ空挺部隊の勇士ジヤン・ボーソク大尉,まずはめでたい限りである.だが休戦2年後に予定されていた政治上の結婚は,ついに花も開かず実も結ばない.というのはジユネーブ会談の取りきめにより,北ヴエトナムと南ヴエトナムは1955年7月から合体の話を始め,1956年7月には両者同時に総選挙を行い,その結果によつて統一政府を作るはずであつた.
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