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世界の波
末松 満
pp.40-41
発行日 1956年2月10日
Published Date 1956/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201119
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鳩山内閣の人気とり看板の一つである経済の6年計画というのが,1955年も押しつまつてから発表された.これは,アメリカの経済学者ゲルハルト・コルムの「1960年のアメリカ」という書物を日本風に焼き直して作り上げたもので,6年後の昭和35年度には,日本国民の人口は現在の8,920万から9,320万に増大するが失業者は逆に現在の70数万から45万に減少するのだという.まことにめでたしめでたしの案ではあるが,この計画の中に「賠償問題が最初の3年の間に解決したとすれば」という意味の文句が書いてあるのを見逃している人が多い.賠償がうまくいかなければ経済6年計画も達成できない……要するに巧みに逃げ道を作つてある政党屋らしいやり口なのである
しからば賠償というのは,一体どのくらい払えばいいのであろうか.平和条約第14条により,日本軍が「占領して」損害を与えた国に賠償を支払う義務があるのだから,アメリカは賠償とは無関係だし,条約を結んで日本軍を迎え入れたタイ国も賠償を要求する権利はない.いわんやソ連や韓国が賠償を口にするなどとは,とんでもない話である.
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