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世界の波
末松 満
pp.42-43
発行日 1956年4月10日
Published Date 1956/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201155
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「婚家を去る」の去るに通じるからといつて,サル年の結婚を避けるという迷信はアメリカ文明に彩られた日本からもう姿を消したかと思いのほか,サル年の今年は目立つて結婚が少ない.2月4日の節分までは未だサル年ではないなどと,これも迷信の上塗りかして,1月から2月へかけてスベリ込み結婚が大流行し,東京のさる結婚式場の話によると,例年同季の5割増しだつたという.
サル年は12年後にまた廻つてくるが,今年から10年後のウマ年は,61年目にやつてくるヒノエウマに当る.現在ヒノエウマの女性は数え年51才になつているが,この人たちが娘時代にどのように苦労したかは想像に余りある.明治39年,ヒノェウマの年に生まれた女の子は,戸籍の上では66万人しかないのに,翌40年には80万人にも達していることを見ると世の親たちが娘をヒノエウマから救おうとして,戸籍までもゴマ化したことがうかがわれる,憐れにも愚かな迷信で,次代の女性を苦しめないために,今から啓蒙にとりかからねばならない.
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