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世界の波
末松 満
pp.40-41
発行日 1955年2月10日
Published Date 1955/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200903
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1955年の元旦現在,日本の総人口は実に8850万に達した.ここ一年間に120万人ほど増えた勘定になる.もつとも昨年は,奄美大島がごつそり日本へ帰つてきたから,この島の20万を差引けば,産んで増やした実数は100万人あまりだ.今年もこの調子で増えるのであろうか.1平方キロ当り239人,オランダ,ベルギーに次いで世界第3位の人口密度だが,山や谷の多い日本のことだ,耕地面積だけに就いて考えると,日本ほど定員超過の国は世界に比類がない.これでは食うに事欠くのも当然といえよう.
だが広い世界のことである.食うに困る国民といえば,まだまだ日本はましな方だ.いま日本国民の1年間の平均所得は1人190ドルであるが,お隣りの中共は50ドルに過ぎないし,東南アジアも同じく50ドルである.これでは人間なみな生活もおぼつかないが,そんな人類が中共に6億,東南アジアに6億2000万も住んでいる.つまり地球上の人類のうち少くも3分の1は貧窮にあえいでいるのだからこれらの生活を高め,これらを味方に引入れることは,世界を制する所以であろう.
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