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世界の波
末松 満
1
1朝日新聞社企画部
pp.28-29
発行日 1952年6月10日
Published Date 1952/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200295
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不具の一人前
講和ができた,さあ日本は独立国だ,と一応考えていいだろうが,あまり独立に浮かれすぎては困りものである。なにしろお隣りの大国ソ連と中共は今でも日本と戦争状態にあるのだから,独立とはいつても半面独立,一人前といつても不具の一人前に過ぎない。それを思い知らせられるのは国際連合へ加入を申込んだ時であろう。講和条約の前文に,日本は独立次第これに加入するよう定めてあるから,遠からずその手続をやるだろうが,加入を許可するかしないかは「安全保障理事会の勧告に基づいて総会が決定する」と,国際連合憲章第四条に書いてある。安全保障理事会を構成する11国のうち7国が,「よろしい」と言わなければ総会の審議に上り得ないのだ。しかもその7国の中に5大国(米英ソ中仏)が必ず含まれていなければならぬという定めがある。従つて5大国のうち1国が反対すると,他の10国が賛成しても,議案は成立しない。5大国のこの権利を「拒否権」というのである。日本が国際連合へ加入を申込んだ場合,ソ連は拒否権を使つて「お断わり」を喰わすことが想像される。
7年前の6月国際連合が生れた時は51国が会員だつたが,今では9国増えて60国になつている。9国はいずれも5大国,全員一致の承諾を得たわけだが,この間14国は加入を申込んで断われた。
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