世界の波

　映画「グレンミユラー物語」で名を挙げたジエームス・スチユアートとジエーン・アリスンの名コンビが，今度は「戦略空軍命令」に主役を演じている．この映画は東京とベルリンで同時に封切され長期上映をつづけたものだが，その間ジユネーブでは一週間に亘る四巨頭会談が行われた．

　「戦略空軍命令」にはB36とかB47とか，およそB29とは比較にならぬ強大な爆撃機が活躍するし，プロ野球の選手が徴用されて操縦士訓練を強制されるなど，非常時意識が横溢している．おそらく冷い戦争に対処するアメリカの「力の政策」を誇示する宣伝映画であろうが，私はこの映画を見ているうちに，血涌き肉おどる勇ましさよりも，こんな爆撃機を双方から繰り出し，原水爆を地上に叩きつけるようになつたら，地球上の人類は絶滅してしまうかもしれないと，むしろ戦争の怖ろしさに身の毛をよだたしめた．