講座
老人の心理(4)
橘 覚勝
1
1大阪大学
pp.126-128
発行日 1956年5月10日
Published Date 1956/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201192
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
§9 老人の適応について
さて以上の考察にもとづいて,老人の適応といい行動といい,全体として如何な特徴があげられるでしようか.
生活場面の変化や社会の変化に対する老人の適応如何ということについて,農村文化から都市文化への変動に対して,老人がどういう風に適応していくかということが,特に近来のアメリカあたりで大きな問題となつているのですが,これは単にアメリカだけの問題ではなく,田園のさなかに近代的建築のアパートが両後の筍のように建ちならんで,地方の小都市が月々に生れ出るわが国の現状にみましても,大いに考えなければならぬところでありましよう.また庭家的に年をとつて配偶者との死別,病臥,失業,離職というような生活上の変化は,それが予期に反すれば反するほど,また突発的であればあるほど,生活上の危機として若いものならとにかく,老人ではそれに適応していくことは困難なことにちがいありません.
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.