臨床医のための心の科学
老人の心理—その死生観をめぐって
霜山 徳爾
1
1上智大文学郎心理学科
pp.1378-1379
発行日 1979年9月10日
Published Date 1979/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216051
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はじめに
老年者の臨床は人が考えているよりずっとむずかしいものである.老人が医師の診断を受けたのちに,医師を悪しざまに他者に語ったり,あるいは黙っていても深いルサンチマンを抱くことがある.診察や検査は何故それが必要か,どこに問題があるのかを明確に示し,良いラポールをつけ,老人の人格を認め(かつては要路の人であっても眼前の老人は痴呆がきているので,若い医師はつい見下したような口を聞くものである),プライバシーを尊重しなくてはならない.また老人の反応や行動はおそいので,十分に時間をかけなければならないし,こちらのペースでやるとすると失敗することが多い.また,老人の背後には長い彼の生活史があり,病歴もある.したがって詳細な記載が必要である.
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