今月の主題 最近の老人病—臨床とその特異性
総論
老人の心理
新福 尚武
1
1慈恵大精神神経科
pp.2036-2039
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205209
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仮に身体に起こる老化現象と精神に起こる老化現象とどちらがより高度に現われるかという問いを発したとすると,研究者によっていろいろの答えがなされるであろうが,その1つは「前者がより顕著に現われる」という答えであろう.筆者の考えもこの方に傾く.というのは,老化は心身すべてにわたる普遍的現象ではあるが,現象として現われたものを問題にすると,精神における老化現象の方が身体における老化現象にくらべてむしろ少ないからである.ということは,精神は加齢にかかわらず,恒常性を保つ傾向が強いということになる.あるいは代償する働きが顕著であるといってよいかもしれない.
しかし,精神の基礎をなすものには,深刻な老化が漸進的に生じているのであるから,恒常性はどこまでも見かけ上のものであることを知らなければならない.そのため,何らかの外因が急激に加わるときは,その恒常性が破れ,想像もつかない著しい老化現象を露呈することがある.
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