特集 慢性疾患—明日の公衆衛生のために
ノイローゼ
中川 四郎
pp.90-97
発行日 1956年5月10日
Published Date 1956/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201180
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.はじめに
ノイローゼという言葉は現代の流行語になつてしまつた.移り気なジヤーナリズムから見ればもう多少流行おくれの気味さえあろう.しかしこの学術語が意味している深い内容については案外多くは知られていないばかりか,一般には昔の神経衰弱と同義語のようになつて極く手軽に使われ,時にはあざけりやさげすみの感を含めて口の端にのぼることがある.しかしノイローゼという言葉は決して原爆症のように近年になつて出現したものでもなく,また,それに嘲笑や軽蔑の意味を加えることは,精神病や癩や結核に特殊な態度を示すことと同様に正しくないのである.事情によつては多くの人々が絶対にノイローゼにならないとは断言出来ない.
最近ノイローゼについて沢山の解説書や飜訳書が出版されており,中には非常に平易で優れているものもあるが1),2),ノイローゼの本態ということになると人によつて色々の考え方があつて無条件に賛成出来ない場合もあり,ことに通俗雑誌や新聞に出ている記事は読者の好奇心を刺戟するように誇張されたり歪められたりしている場合が多く注意しなければならない.
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.