特集 公衆衞生とノイローゼ
綜説
性に関するノイローゼ
西丸 四方
1
1信州大学医学部精神科
pp.27-30
発行日 1957年2月15日
Published Date 1957/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201788
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ノイローゼの中で性に関係するものが特に多い様な感じを誰しも起すものであり,又ノイローゼは本来性的なものであるとさえ考えられるのが普通であるが,その理由として,人間の精神生活の中で,殊に欲望不満や葛藤や心配を起し易いのが性的領域であることもあるけれども,それより大きな役割をしているのが,フロイトの精神分析の見方による影響であろう。精神分析によれば,ノイローゼは根本的には性的欲望の抑圧から起るのであり,変態性欲は神経症と同列のものであるとするのである。フロイトは実をいうと変態性欲の存在から逆にその神経症理論を立てたのであつて,変態性欲と神経症と同列のものであるというのは一つの仮定である。しかしいかにもその様にみえるものもある。いかにもそう見えるというのはどういうことかというと,神経症では今,ある精神的身体的症状が,以前の精神的経験からいかにも由来したように見える時に,神経症というということなのである。われわれは神経症の診断をつける時に,いかにも神経症らしい症状―といつてもひどくまちまちなものであるが,何となくそういうものがあると思つているのであり,変態性欲や性的障害の諸状態もそれである―をもとにしてつけるのであるが,それと同時に,これはいかなる以前の精神的経験から由来しているかを問題にして,その様な精神的経験を探すのである。
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