特集 公衆衞生とノイローゼ
綜説
ノイローゼとは
塩入 円祐
1
1慶応大学医学部
pp.1-10
発行日 1957年2月15日
Published Date 1957/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201784
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はしがき
「ノイローゼとは何か」という設問に答えるに当つて,その原因,症状を述べる前に,一体ノイローゼなるものが疾病と云われるべきかどうか,を吟味する必要があるだろう。なぜならばこれは器質的変化を持つ所謂疾病ではないからである。
ある神経系なり器官なりに炎症や変性乃至は機械的損傷があつて,その神経系や器官が働かなくなるとすれば,これは疾病ということが出来る。かりにそのような器質的変化がなくとも,その変化を予想させるような症状があれば未だ疾病と云つてよい。例えば震顫麻痺が1817年にパーキンソンParkinsonによつて記載された頃にはどこにも器質的変化は見出されず,ノイローゼと同様な機能的疾患とされていた。脳炎,進行麻痺,脊髄癆,舞踏病などさえも始めはノイローゼの中に包含されていたことを思うと,今更乍ら医学の進歩の道程に感慨を覚えずには居られないだろう。このようにしてノイローゼの中から次々と器質的疾患が取出され,除かれて行つて,最後にノイローゼとして残つているもの,それが今日流行になつている所のものであり,今ここで取上げようとしているのである。
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