特集 高血圧の疫学
隨想
高血圧研究と疫学
美甘 義夫
1
1三楽病院
pp.122
発行日 1959年2月15日
Published Date 1959/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202095
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本誌のような公衆衛生専門誌に高血圧症が特にとり上げられるには充分の理由がある。国民の平均寿命の延長高令者人口の増加といつたような現在の事態が,当然高年者の死因の最も重要なものの一つである高血圧症に注意を向けさせるからである。従来本態性高血圧症の研究では,原因や発生に対して非常に大きな努力が払われているが,今日なお単一な原因・発生過程は究明されていない。従つて当分は遺伝体質的因子,精神神経性因子,内分泌性又は体液性因子,腎性因子などが種々な組合せが働いて本態性高血圧を作り上げると理解する他ないであろう。
しかるに臨牀の面から本態性高血圧症を見ると,特に第二次大戦後陸続と発表された降圧剤により,高血圧のコントロールが有効に安全に行われるようになり,しかも薬物による高血圧の長期調整は単なる対症療法に止まらないことが立証されつつある。即ち本態性高血圧症患者が早晩逢着しなければならない,脳・心・腎の合併症を高血圧の長期コントロールにより軽減し,それによる死亡をも減少して生存率を増加することが示されつつある。この結果は実際的に意義は大きいが,高血圧の発生を逆にこれから結論づけることはできない。
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