講座
肢体不自由の予防
高木 憲次
,
小池 文英
pp.26-31
発行日 1955年12月10日
Published Date 1955/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201074
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1.公衆衛生と肢体不自由の予防
肢体不自由児の対策としては,医学的な面,教育,心理の面,職能,職業多岐にわたる一貫した綜合的な措置を必要とし,更にまた本人をとりまく社会の理解と協力,及び行政的な施策の裏ずけ等が不可欠の要件をなすのであるが,このような対策の一環として「予防」の占める地位は甚だ重要であり,或る意味では対策の出発点をなすものとみることが出来る.
ところで,この肢体不自由の予防には二つの立場がある.その一つは,公衆衛生の立場であつて,保健指導の徹底によつて或る種の肢体不自由の発生を未然に防止する方法である.例を挙げて説明すると例えばクル病に基く所謂「せむし」は要するに骨格の組織がクル病のために柔軟になつているので,体重やその他外力に圧倒されて変形を招来したものである.従つて,保健指導によつて乳幼児がクル病に罹らないようにすれば(或はせめてクル病の潜在性の時期に発見して頓挫させてしまえば),脊柱や四肢の変形を来さないですむこととなる.現に最近は高度の「せむし」をあまり巷間に見受けないようになつたが,これは公衆衛生の普及によるものと考えてよいであろう.
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