2頁の知識
トラコーマの最新治療
徳田 久弥
1
1東大分院
pp.67-68
発行日 1955年10月10日
Published Date 1955/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201044
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トラコーマの治療は,オーレオマイシン,テラマイシン等の広域スペクトル抗生物質の出現によつて,非常に容易に行えるようになつたが,実際に治療してみると,難しい点が多々ある.第一は,トラコーマが慢性の増殖性変化であるため陳旧になるに従つて,色々な合併症が起り,これらは最早抗生物質療法によつては可逆的な治癒は希めないと云うことである.云いかえると,早期に適当な治療が加えられなければ,もとの綺麗な状態には立ち返えらないと云うことである.現在迄に現れたいかなる報告をみても,その対象が小中学児童のような若い年齢層の集団治療でさえ.100%の治療率は認めることが出来ない.と云うことは,学童のような若い年齢層の中にも相当陳旧化したトラコーマが数少いが確かに存在し,そのようなトラコーマは,ある程度軽快しても完全治癒迄至らないと云うことを示すものである.即ち,早期発見と早期治療,これが第一の条件である.第二に此等抗生物質の発見によつてトラコーマ治療が非常に容易になつたとは云え,同じ抗生物質による他の疾患の治療,例えば肺炎や淋病等の治療とは異り,相当の日時を要すると云うことである.1日数回の点眼を2カ月も続けると云うことは,云い易いが仲々行い難いものである.殊に自宅療法においてそれを痛感する.と云つて毎日病院に通わせることも出来難いと云う点に,単純であるが最も厄介な面に逢着するのである.
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